「片手に収まるほど小さな体で、もう片方の手には、 世界中の人の心を抱えていた。」
パンチくんは、はじめから有名になるはずの子ではありませんでした。 小さく、弱く、望まれずに生まれ、最初の息をした数時間後には、 群れから拒まれた一匹の赤ちゃんニホンザル。 そこで、飼育員たちが動きました。ボランティアが夜を徹して交代しました。 あたたかい毛布、小さな哺乳瓶、慎重な手のひら。 始まる前に終わっていたかもしれない命が、静かに、しかし頑固に、つなぎとめられました。
誰かが動画を投稿しました。そしてもう一本。それから世界がやってきました。 あらゆる大陸の見知らぬ人々が、パンチくんが登ることを覚え、 握ることを覚え、信じることを覚える姿を見つめました。 「負け犬」という言葉を知らない負け犬。 自分が有名だとは知らないまま、ただ、選んでくれた人々の手のぬくもりだけを知っていました。
インターネットが共有した、ひとつの悲しみ
病はゆっくりと、そして一気に来ました。 獣医師は最善を尽くしました。飼育員は展示場のそばで眠りました。 パンチくんが決して見ることのない街々で、ファンがろうそくを灯しました。 最期のとき、生まれた日にはじめて彼を抱いたのと同じ手のひらに、 彼はやわらかく抱かれていました。
見出しでもマスコットでもありませんでした。 疲れた世界に、まだやさしさが可能であることを思い出させてくれた、 とても小さなお猿さん。それは、小さなことではありません。 それはたぶん、たったひとつの大切なことでした。
飼育員の言葉
「彼は、私たちが思っていたよりずっと強く戦いました。 体の大きさよりも、ずっと大きな存在でした。 ありがとう、パンチくん。ゆっくり、おやすみ。」
動物園は、花を送らないでほしいと呼びかけています。 その代わりに、小さな者、拒まれた者、 はじめから世界に見放されそうな者たちに、 もう少しやさしくしてあげてほしい、と。 それが、パンチくんに届く一番の弔いになる、と。
安らかに、パンチくん 🕯